■ 婆沙羅 ■
乱世に出現した新人類
 
 いつの時代にも、旧来の常識の枠におさまらない新人類は決まって姿を現しました。その傾向は、とりわけ価値観が揺れ動く乱世において顕著でした。
 史上有数の乱世である南北朝時代の新人類は、階層間ギャップの落とし子でした。まとめて婆沙羅(バサラ)と呼ばれた彼らの主体をなしたのは、南北朝の乱世に活動の場を与えられた新興武士層でした。
 彼ら婆沙羅は武力と財力をあわせ持ち、社会秩序の破壊者という性格が極めて強かったといえます。彼らにとっては、伝統の権威とか価値観などというものは、ほとんど無意味なものでした。既成の秩序の逆転という過激な好意を平然とやってのけたところに、彼らの一番の特徴があります。
 婆沙羅の代表的人物といえば、土岐頼遠、佐々木道誉、高師直の三人でしょう。いずれも発足当初の足利政権の有力者でした。
 彼らには多くの逸話が残されていますが、例えば高師直は、「都には天皇や上皇がいるけれども、われわれ武士には何の役にも立たず、かえって厄介のタネでしかない。どうしても王が必要というのであれば、木や金属でかわりの像を作り、本物の天皇や上皇は島流しにしてしまえばいい。」と日頃広言していたとか。また彼は神社仏閣に対しても容赦のない態度で望み、岩清水八幡宮、修験道の聖地・吉野山などを破壊しました。
 ただし婆沙羅のパワーは破壊だけに向けられたわけではありません。彼らは一面で新しい文化のすぐれた育成者でもあったのです。
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