■ 観阿弥と世阿弥 ■
 
大きさでは観阿弥、深さでは世阿弥
 
 観阿弥と世阿弥の芸を比較すると、大きさでは観阿弥、深さでは世阿弥といわれます。観阿弥の芸はより民衆の意識に近いもので、それまでの猿楽が各地を遍歴しながら農村や寺社によって支えられてきたものであることを、彼の作品は面影として残しているのです。彼の作品は世阿弥と比較するとやや泥臭い感じがしますが、いかにも大衆をよろこばせるような作品が多いのが特徴です。観阿弥の劇の真骨頂は、スリリングで生彩に富む対話劇にあったといえます。
 一方、世阿弥の作風はどちらかというと貴族的でした。それは彼が十歳ごろから京に出て、上流階級と交際しながら古典教育を受けていることによります。世阿弥は、観阿弥の能のような具体的な人間同士のドラマではなく、古典的情緒を大事にしながら一個の人間の深層を掘り下げるドラマを追求するのです。彼の作品に、亡霊や物狂いなどを主人公にする夢幻能が圧倒的に多いのも、大きな特徴といえます。現在の能の主流もこの夢幻能です。
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